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クラス1万の静電気付着対策について

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クラス1万のクリーンエリアにおける静電気付着(ESA)対策について
「静電気対策」と一言で言ってしまうと、ワークにゴミ・ホコリが付着する ESA の他、デバイスの静電気破壊(ESD)対策、電子機器の誤動作の原因となるノイズなどに対する EMI 対策などをを含む様々な静電気障害に対する対策の総称を指します。特にエレクトロニクス関連製品の分野ではこのような総合的な静電気対策が大変重要です。よって、一般的な静電気対策のページを見ると、それらを総合的に解説することが多いようです。
フィルムロールの付着
しかし、製品の表面にゴミ・ホコリが付着する静電気付着問題を中心に対策が必要な業種・業界も最近は増えてきました。フィルムや袋などを含む プラスチック成形や金属部品加工~塗装 、レンズなどの 光学部品の成膜 などがそうです。

そこで、このページではクラス1万(ISOクラス7)前後でクリーンエリアを管理される皆さまを対象に、特に「静電気付着(ESA)対策」について、プラスチック成形~塗装・乾燥の工程を例にとって考えてみたいと思います。 


成形~塗装までの静電気付着要因を考える
なぜ、プラスチック成形~塗装・乾燥工程なのか?

今回、例として取り上げる工程は プラスチック製品を成形機で成形し、取り出した後、加工・組立を行い、除塵作業を経て(特に設けない場合も多い)塗装、乾燥へと進むプロセス です。各種自動車部品や携帯電話や化粧品のケースなど私たちが日常生活の中で目にしている多くのモノがこのようにして作られています。
この分野では塗装~乾燥間にワークの表面にゴミ・ホコリが付着していると不良品となるため、ゴミ・ホコリ対策が大変重要です。しかし、以下のような理由で「対策は簡単ではない」、と言われています。
  • プラスチック製品は静電気を帯びやすく、ゴミ・ホコリの付着が多い。
  • 既設装置・工場で製造する場合、スペース・レイアウトの問題でクリーン化が難しく、
    よって作業環境からホコリをなくすことは難しい。
  • 塗装前には目視検査では分からなかったホコリが塗装後はしっかり目立つようになる。
クリーンルームクラス1万の静電気対策
上図は真ん中に成形~塗装までの工程を、上部にゴミ・ホコリに関する要素を、下部にその付着対策についてまとめたものです。以下、図中の番号に従って、ホコリ付着対策のポイントを解説します。

図を眺めていただくとすぐお気付になる、と思いますが、「ゴミ・ホコリの付着は全て静電気のせいである、よって静電気対策によってすべて解決する」とは、シーズシーでは考えておりません。「静電気対策でホコリ不良は半減する」「除電グッズを導入すれば後は問題ない」という考えはちょっと危険です。しかも、世の中の静電気対策の提案はESD対策やEMI対策もごちゃごちゃの場合が多く、(もちろん、エレクトロニクス関係ではこれらすべての対策が必要な場合も多い)気がつかないとずいぶん無駄な投資をしている場合もあります。
逆に、一般的なクリーン化対策も静電気対策を抜きでやれば、単に清浄化された空間を作るだけで、その中で製造するワークはゴミ・ホコリだらけ、ということも起こりうるのです。

原因と結果をしっかりととらえ、現状を正確に把握することでスマートなクリーン化・静電気対策が可能になると思います。

① 粗大粒子は重力沈着する
対象とするゴミ・ホコリを粗大粒子とすると、基本的動作は重力沈着です。つまり、落下してきて降り積もる、ということです。意外にも静電気による付着は少数です。ワークが帯電している場合はやや目立ちますが、ワークが1000V以下の帯電しかしていない場合には、重力による沈着と比較すると非常にわずかな数しか付着はしません。その他、水分や油分による付着、化学的吸着もわずかながら原因としては考えられます。
ほとんどのゴミ・ホコリは重力沈着
一度付着するとなかなか取れないゴミ・ホコリ
しかし、一度ワークにゴミ・ホコリが付着すると、なかなか取れなくなります。乗っかっているだけなら、逆さまにして振るなどすれば落下してしまうように思いますが実際にはそのくらいではほとんど取れません。

② ホコリの付きやすい条件
ゴミ・ホコリが付着する要因は「静電気付着」のほかに「気中のホコリ濃度」「気流の影響」「重力沈着」「滞留時間」「表面の状態」が挙げられます。そのうちの静電気付着は一番大きな要因ではありません。また静電気付着は次のような条件で増加します。
  • ワークが帯電し易い
  • 高電圧の装置などが近くにある
  • 低湿度
  • ワークに風が当たる
  • 摩擦・剥離・振動などを伴うプロセスがある
  • ホコリの多い環境である

③ ホコリの多い環境は対策により減らすことが可能
ゴミ・ホコリの多い環境の場合は、まず、ホコリを減らすことから始めるのがベターだと思います。作業員教育などのソフト面から、クリーン機器のハードの導入で対策ができます。
  • 作業員にゴミ・ホコリ対策の教育を与える。
  • 十分に清掃する。
  • ホコリの多い外気の侵入を防ぐ。
  • プロセスにおける発塵要因を改善する。

④ 付着防止対策
先に述べたようにワーク表面に一度付着したゴミ・ホコリは例え付着するという現象が静電気に由来しなくても、後からは簡単に除去できなくなります。よって、ゴミホコリが付着しにくい環境を整えることが重要です。
  • 工場の環境中のホコリを減らす
    1. クリーンルーム化(必要な工程を囲う、陽圧化、フィルタリング、エアシャワー設置など)
  • 作業・プロセスで発生する発塵を抑える
    1. 局所クリーン化 (クリーンブースやクリーンベンチなどの設置・・・工程間の移動・仕掛品の保管にも注意すること)
    2. 気流コントロール (ワークを上流に、発塵源を下流に配置する・・・乱流、滞留域の発生に注意、排気がある工程では特に重要)
  • 静電気付着を防ぐ
    1. イオナイザーの設置(ワークの帯電が大きい場合、イオナイザーで除去します。局所的な対策に有効。)
    2. 湿度コントロール(湿度40~60%に調湿します。表面の抵抗値を下げ、静電気が起きにくい環境になります。広い範囲にまんべんなく効果を発揮します。また、ホコリの落下を促す働きもあります。)
    3. 表面抵抗値の管理 (導電性・帯電防止仕様など静電気対策製品と呼ばれる表面抵抗値を管理された製品を使い、環境中での高い静電気の発生を防ぎます。)
     

⑤ 除塵対策
付着防止対策だけでは100%の効果を期待するのは不安です。そこで塗装に入る前にワーク表面にすでに付着したゴミ・ホコリを除去する作業を行います。ワークの形状や特質、周囲環境などに応じて様々な除塵方法があります。

しかし、せっかく除塵しても除塵作業自身が静電気を発生させ、再付着してしまうという現象が多々見られます。さらに除塵作業から塗装工程までの付着防止対策も並行して行わなければやはり再付着してしまいます。静電気対策が難しいと感じるのは除塵作業自身により静電気が発生し再付着が起こる、ということだと思います。
静電気を除去しながら除塵が可能な適切な方法を見つけなければなりません。それはワークや工程によって違って来るように思います。以下、よく使われる除塵ツールについて解説します。

同時に、除塵がしっかりできているかを確認するクリーンルームライトのようなツールの導入も大変重要です。
  • 粘着ローラー ・・・装置タイプ(イオナイザーオプションあり)と手動式があります。ホコリの飛散はほとんどないと思われますが、剥離帯電には注意が必要です。手動式の場合は帯電防止タイプを使用したいですね。
  • エアーガン ・・・イオナイザー付きタイプもありますが再付着防止をしっかりやらないと風が強いため、吹き飛ばされたホコリが思わぬところで再付着する場合もあります。また、飛ばされたホコリは落下塵となるので注意が必要です。
  • ワイパー(ワイピングクロス)・・・ドライな状態で使用すると多くのワイパーで却って発塵してしまう、という現象が見られます。また、拭き残しなども多く発生し易いので、注意が必要です。
  • ブラシ・・・静電気対策を併用しないと再付着が多く発生します。
  • 掃除機・・・市販の掃除機を改造したものをブラシと併用するなど、内製の除塵装置として多く見かけます。意外に静電気を多く発生させるので注意が必要です。
  • 洗浄・・・洗浄工程を追加する場合、コスト面の問題、乾燥工程をどうするか、などをクリアする必要があります。
  • 除電・・・一般に数10μmの繊維くずなどのゴミ・ホコリを対象とした場合、除電するだけではほとんどきれいになりません。

⑥ 除塵対策(実験)
実際にいくつかの方法で静電気がどの程度除去できるのか、測定しながら調べてみます。

【実験1】 帯電した塩ビ板を除電する。

ホームセンターで購入した塩ビ板をブックエンドを使って立てます。
オムロン製スマート静電気センサを使い、保護フィルムの上から帯電位を測定しながら、下記アイテムを使って除電を試みます。除電前はだいたい4~5KV程度ありました。

   除電ワイパー「電気トール」
   水
   アルコール
   帯電防止剤(トッパンフォームズ「快適水」)

まず、除電ワイパー「電気トール」。拭きとり性能がよいのと、静電気が起きにくいということで個人的にもパソコンの画面の拭き取りなどに使用しています。
ドライの状態で拭きました。一時的に電位は下がりますが、瞬間的に元に戻ってしまいます。
  
次は「水」不織布ワイパーに浸して使用しました。電気トールと同様に拭きとり時に一時的に下がりますが、また元に戻ってしまいます。
  
続けて「アルコール」です。同じく不織布ワイパーに浸して拭きます。ゼロV近くまで電位が下がり、拭きとり後上昇しますが、元の電位までは上昇せず、明らかな減衰が見られました。
  
最後は帯電防止剤「快適水」です。不織布ワイパーにスプレーして拭くと、ほとんどゼロVに減衰し、終了後もそのまま、ほとんどゼロVの状態を維持していました。

  


【実験2】除電した塩ビ板にホコリは付着するだろうか?

はじめは4~5KVに帯電していた塩ビ板をポラリオンライトで照らしているところへ、ハンカチを叩いてホコリを発生させて、塩ビ板への付着を目視確認します。
以下の条件で、実験しました。

   通常に叩く
   帯電防止剤(トッパンフォームズ「快適水」)で拭いた後、ハンカチを叩く
   市販のイオナイザーをかけながら叩く
   イオナイザー+快適水
   CS-JJ+ファン




ハンカチを叩いてホコリを
発生させます。
何もしないと塩ビ板は帯電し
たまま・ホコリも付着します
「快適水」で拭き、除電後に
ホコリを発生させました。
市販のイオナイザーを掛けな
がらホコリを発生させました。
まずは、新しいハンドタオル(ハンカチ)を何の対策も行っていない状態で、叩く(①)と、塩ビ板は帯電したままで、ホコリの付着が多く見られます。(②)次に快適水で拭いた塩ビ板の前でホコリを発生させます。除電はできているのですが・・・ホコリはしっかり付きます。(③) 次は市販のブロア型イオナイザーを約20cmの距離に設置します。(④)


イオナイザーでゼロVに
なってもホコリは付着します。


イオナイザー+快適水は
かなり効果的。


CS-JJ+ファンでも実験


CS-JJ+ファンも
かなり効果的。
イオナイザーをONすると少しして電位はほとんどゼロですが、やはりホコリは付着します。(⑤)次は快適水で塩ビ板を拭きとった後に、同様にイオナイザーをかけると今度はかなり効果がありました。ホコリの付着はわずかに抑えることができました。(⑥)最後の実験はCS-JJの後ろにファンを設置しました。ブロア型イオナイザーよりやや速い風速が出ていたようです。(⑦)結果はこれもあまり付着はありませんでした。風速が速いのがよかったような気がします。(⑧)
その他にも多くの静電気に関する実験を行っています。

静電気実験動画を参照してみてください。 →シーズシーの実験動画のページ(静電気編)
帯電防止粘着ローラー イオナイザーによる毛髪除去 イオナイザーでは付着ゴミが増える etc.静電気実験多数!



背景として

近年、プラスチック加工を行うプロセスでのクリーン化ニーズが増加しています。これは半導体や液晶など微細加工を行うプロセスと違い、比較的大きな(数10μmを対象とすることが多いようです)ゴミ・ホコリ=粗大粒子を対象とすることが多いようです。プラスチック製品は非常に帯電しやすく、そのため、除電装置は以前から導入していた、というケースも多いのですが、品質向上の要求が高まるにつれて、クリーン化による対策を導入しようという動きが加速しています。

また、目に見えないような大きさのゴミ・ホコリを対象とするので静電気対策も重要だというお話をよく耳にします。それは間違えではないのですが、全てが静電気のせいではありません。特に気中にあるゴミ・ホコリは落下塵として製品表面に付着します。まずはホコリを減らすこと、ホコリの挙動をしっかり把握すること、どのような対策を打てばどのくらい効果があるのか、しっかり把握することなどが大切です。
その上で、除塵作業時の静電気対策をきっちり行うこと。そうでなければ、除塵したゴミ・ホコリの再飛散・再付着が起こってしまい効果が薄れてしまいます。
ただし、以下の分野ではより専門的な対応が必要となります。シーズシーでは対応しておりませんのであらかじめご了承お願いします。
1.100V以下の管理が必要とされる分野(液晶、HDD、半導体など)
2.防爆対策が必要とされる分野
3.10KV以上の大きな帯電が発生する分野(フィルム加工、高電圧エリアなど)

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