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シーズシーからのメッセージ(2013年2月)~大気汚染と粒子

【はじめに】 

1970年代には日本国内でも深刻な大気汚染が発生し、公害問題として社会に大きな影響を与えていました。しかし、次第に各種規制の効果が出て、国内由来の大気汚染は減少傾向にあるとされています。しかし、2000年以降、大陸由来と見られる大気汚染が主に日本海側で観測されており、今年はさらに全国的に広範囲へ被害が拡大することが懸念されています。シーズシーは大気汚染の専門家ではありませんが、問題となる粒子の大きさと国内のクリーンルームへの影響について考えてみました。
 【大気汚染とは?】  ・・・wikipediaより抜粋

大気汚染(たいきおせん)とは、人間の経済的や社会的活動、火山噴火などの自然災害などによって大気が有害物質で汚染され、人の健康(目や呼吸器などへの害)や生活環境、動植物に悪影響が生じる状態のことである。環境基本法第2条第3項に規定された「典型七公害」の一つである。

大気汚染の原因となる主な発生源と物質は、
  • 自動車などの排出ガスが由来の浮遊粒子状物質(SPM)や二酸化窒素(窒素化合物)
  • 工場などからの排煙を由来とする亜硫酸ガス(硫黄酸化物)、揮発性有機化合物(VOC)
  • 廃棄物の焼却排ガスを由来としたダイオキシン類、スス
  • 建築物の解体を由来とするアスベスト
  • 自然由来としては火山活動や黄砂の粉塵
など、多岐にわたる。大気に浮遊し大気を汚染する物質であれば気体、液体、固体を問わない。すす等の微粒子が空中に漂い、煙とも霧とも着かぬ状態になるのをスモッグという。
 【SPMとは?】

国際的に大気中の粒子状物質,特に微小粒子の健康影響に関する関心が高まっている。その最も大きな背景には,米国において1997年にPM10に関する環境基準が改定されて,PM2.5と呼ばれる微小粒子の環境基準が追加されたことがあげられる。一方,我が国では昭和47年(1972年)に浮遊粒子状物質の環境基準が設定された。この浮遊粒子状物質は,英語のSuspended Particulate Matterの頭文字をとってSPMと略称されることが多く,大気中に浮遊する粒子状物質のうち,粒径10μm(百万分の1メートル)以下のものと定義されている。

大気中の粒子はさまざな物理的,化学的な性質を持っている。そのような性質の中で粒子の大きさ(粒径)は健康影響や大気中での挙動を考える上でもっとも重要な特性である。そのため,粒子状物質を粒径によって分類(分級と呼ばれる)して捕集し,測定することが一般に行われている。分級にはいろいろな方法があるが,ポンプで空気を吸引して粒子を含む空気の流れを作り,その流れを曲げた時に大きい粒子は慣性によって流れから外れ,細かい粒子は流れに乗ってそのまま進むという原理を応用している。この場合の粒径はものさしで測った長さではなく,空気の流れの場の慣性にかかわるもので,空気力学径と呼ばれている。以下で出てくる粒径はすべて空気力学径を示している。例えば,PM2.5は空気力学径が2.5μm以下の粒子のことである。ただし,測定原理上2.5μm以下の粒子といっても,2.5μm以下の粒子を100%含み,2.5μmを越える粒子は全く含まれないというものではない。粒径別の捕集効率は図のような曲線となっており,PM2.5は捕集効率が50%となる空気力学径が2.5μm となる粒子のことである。同様に,PM10は捕集効率が50%となる空気力学径が10μm となる粒子のことである。一方,我が国のSPMは10μm以下の粒子と定義されているが,正確には10μm を越える粒子が100%カットされている粒子のことである。したがって,SPMとPM10は異なる粒径のものであり,粒径分布からいうと PM2.5 < SPM < PM10 ということになる。

引用・・・(独)国立環境研究所 国立環境研究所ニュース 
「環境問題基礎知識 SPM,PM2.5,PM10,…,さまざまな粒子状物質」 新田 裕史氏
 
 【クリーンルーム規格の浮遊微粒子】

大気中には0.1μmから100μm以上まで様々な粒径の粒子が広く分布しているが、一般的な粒子ではばい煙、たばこの煙、微細けい砂(砂ほこり)などが1μm以下の浮遊微粒子に属していると言われている。これらは空気中の酸素や窒素と衝突して一般にブラウン運動と呼ばれる複雑な動きをするが、マクロ的な視野でみると空気の流れ(気流)に沿って移動する。非常に落下しにくく静止した空気中でも浮遊し続け滞留するという特徴がある。

浮遊微粒子は様々な形状がありうるが、一般にクリーンルームの浮遊微粒子は光散乱式で計数するため、散乱光量で求めた粒径で表す。

つまり、SPMとは違う方式で求められているということです。一言で言えば、SPMはカスケードインパクタと言う装置で測定し、μg/m3で表します。クリーンルームの浮遊微粒子はパーティクルカウンターで測定し、粒径・個/m3で表します。
 【黄砂】

黄砂は従来、黄河流域及び砂漠等から風によって砂塵が運ばれてくる自然現象であると理解されてきました。しかし近年では、その頻度と被害が甚大化しており、急速に広がりつつある過放牧や農地転換による土地の劣化等との関連性も指摘されています。このため、黄砂は単なる季節的な気象現象から、森林減少、土地の劣化、砂漠化といった人為的影響による環境問題として認識が高まっているとともに、越境する環境問題としても注目が高まりつつあります。

引用・・・環境省 > 大気環境・自動車対策 > 黄砂 > 黄砂ってなに?
 黄砂粒子には、石英や長石などの造岩鉱物や、雲母、カオリナイト、緑泥
石などの粘土鉱物が多く含まれています。日本まで到達する黄砂の粒径の分布は、直径4ミクロン付近にピークを持ちます。黄砂粒子の分析からは、土壌起源ではないと考えられるアンモニウムイオン、硫酸イオン、硝酸イオンなども検出され、輸送途中で人為起源の大気汚染物質を取り込んでいる可能性も示唆されています。

引用・・・環境省 黄砂パンフレットより
 


 上中2枚の図は黄砂が日本に到着するメカニズムを示しています。中国本土よりもはるかに濃度的には薄くなっていますが、大きな粒子は飛来するうちに海などに落下してしまい、日本に到着したときには現在大きな問題となっているPM2.5相当の粒子径を中心とした分布となっていることが分かります。

上・中図:環境省 黄砂パンフレットより
下図:京都大学医学部大学院医学研究科社会健康医学系専攻 健康情報学金谷 久美子氏
 【クリーンルームへの影響】

今からの季節、偏西風に乗って大陸からの粒子飛来が回数、量ともに増加傾向になると思われます。クリーンルームへの悪影響は次の2点で大きくなると予想されます。

1.外気に含まれる粒子濃度の上昇  2.作業員や資材への付着粒子の持ち込み

1.の対策では、まず、クリーンルームでは外気処理用フィルターの管理を十分に行うことです。特に差圧管理をされていない場合は、差圧が急激に上昇してバランスが壊れる恐れがあります。本格的なシーズンを迎える前に外気処理用フィルターを交換することも対策の一つです。

また、プレフィルターのみで中性能フィルターを併用していない場合はクリーンルーム内に流入する粒子数が増加する場合もあります。粒子濃度が上昇する場合は外気導入量を清浄度に影響が出ない程度に絞り込む方法もあります。

2.について、クリーンルームへの付着持込み防止の役割を担うのはエアシャワーですが、その機能をフルに活かすような対策が有効だと考えられます。まずはエアシャワーのタイマー時間の見直しや、粘着ローラーの併用、アイビーキャッチャー、アイビーキャッチャーLタイプを使用して、エアシャワーが落としたダストの回収効率を上げることです。
 【まとめ】

かなり以前の話ですが、火山の噴火が原因で半導体製品の歩留まりが急激に落ちたことがありました。多くの工場ですぐには原因がつかめず、大変な騒ぎになったことを覚えています。大気汚染の影響は国内の工場にとっては、対岸の火事的な見方をされ、報道でも健康被害への懸念を中心に取り上げられていますが、製造現場でも間違いなく問題になるテーマです。これからの動向を注意深く見守りましょう。

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