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会員トップページ > 新事例INDEX > 新事例18

2017.03.13更新
人における異物対策のご提案
異物対策において、幅広く手当たり次第で対策を設けるのが得策ではないように思われます。商品創出までの製造現場の清浄度に関わる要因を整理し、問題点を一つ一つ特定し、改善していくのが良いでしょう。いっぺんに広く浅い活動をするより一点一点の狭く深い活動を積み上げておけば、最終的には、全てが横へ繋がり、効果が広がっていくと期待できます。まず、製造現場の構成の整理から始めましょう。

現場構成の整理には、細かい所はそれぞれ異なるでしょうが、根本的な所はみんな一緒かと思います。ここはVDA19.2(※)に基いて考察していきたく思います。

参考
※VDA19.2については、新事例6「VDAによるクリーン化超入門編」をご覧になれば幸いです。
VDA19.2による4グループ分け
VDA19.2では、現場の清浄度に影響する要因を下記の通りに4グループに分けています。
工程
  • 計画
  • 要素及び設計原則
  • 接合プロセス
  • ライン内洗浄
  • 設計原則
  • 開始
環境
  • 設置計画
  • 清浄度ゾーン
  • 床、壁、天井
  • ドア、ゲート、窓
  • 換気、エアコン
  • 経路/通路
物流
  • 包装
  • 搬送及びエアーロックのコンセプト
  • 開梱及びピッキング
  • 保管
要員
  • 基本ルール
  • 訓練コース/資格認定
  • 衣服
  • 取扱
  • 作業エリアの清浄に保持
※VDA19.2日本語版の20ページより

上記のグループ分けは単なる一部の案ですが、このように一つ一つの項目に着目して、改善していけば良いでしょう。

今回は製造に大変重要な構成である「要員(/人)」の「衣服(/服装)」に重点を置いて、異物対策をご提案したいと思います。
人における異物対策は、「服装」から
人における異物対策は、ソフト面(ルール・教育)とハード面(適切な服装など)、両方が必要となります。ルールと教育も重要ですが、それは大規模で、定着するのに時間がかかります。まず、素早く改善できるのは、「服装」からなんでしょう。
人はゴミのかたまりと言われるほど非常に大きいな発塵源なので、クリーンルームの中では、体と洋服からの発塵及び異物の持ち込みを抑制する為にクリーンウエア、クリーンブーツ、クリーンフード、マスク、手袋の着用が求められます。適切な服装を着用することで、発塵抑制効果がある程度期待できます。そして、効果を保持するために、正しい着用とキレイな状態を保持する努力が必要となります。ここからは、服装の各パーツの異物対策についてご提案していきます。
(1)クリーンウエア
クリーンウエアは、密着した生地で体と洋服からの発塵を外に出ないように予防する役割があります。但し、それは正しく着用する場合に限ります。
首元や手首など体の一部を出したら、ウエアの発塵防止の効果が低下します。
また、密着した生地な程、ポンピング発塵が発生しやすくなります。
 
ポンピング発塵の詳細はこちら

 ポンピング発塵とは動作によりウエアの内圧が上がり、わずかな隙間である襟口、袖口より勢いよくホコリが飛び出す現象のことです。体を激しく動かしたりすると、更に発生しやすくなるので、クリーンルーム内では、激しい動きを控えましょう。
ウエアの正しくない着用やポンピング発塵はルールと教育である程度予防することができるでしょうが、より簡単に改善できるのは、ハード面でしょう。そこで、適切な通気量のウエアを選ぶことをお勧めします。そもそも作業員の着用が乱れるのはなぜか?原因の大半はクリーンウエアを着てクリーンルーム、クリーンブースに入ると暑いからだと考えられます。ウエアには、様々な生地があり、通気量の種類も豊富です。防塵性を重視するなら、密着した生地(通気量が低い)が良いですが、その分、ウエア内に熱がこもりやすく、着用者は暑く感じます。また、ポンピング発塵も発生しやすいです。そのため、微粒子が問題にならない現場では、作業員の快適性を重視し、通気性の高い生地を採用すれば良いかと思います。まず、自分の現場での問題なる粒子サイズを把握することが重要です。シーズシーには、製品に影響を与えにくい背中だけが通気量100ccで、それ以外は防塵性に優れる通気量5ccの生地を使用したすぅ〜っとクリーンという製品がございます。防塵性と快適性が両立したウエアになっておりますので、ご興味のある方はお問合せください。
紹介アイテム
コンポジットウエア
背中が通気性の良い生地で、きちんと着用しても熱がこもりにくいので、着用者の腕裾めくりなどが少なくなるでしょう。また、ポンピング発塵の軽減も期待できます。

また、クリーンウエアは長繊維でできておりそれ自体からの発塵はありませんが、付着異物には注意が必要です。着用しているとクリーンウエアと言えども次第に汚れていきます。ウエアが汚いまま入室すると、クリーンルーム内も汚くなります。従って、できるだけ異物の持ち込みを最小限にすべきです。現代の技術では、異物持込み防止アイテムとして一番期待できるのは、エアシャワーでしょう。エアシャワーは強い風でウエアから異物を飛ばし落とすのですが、要注意点がいくつかあります。
1)風が当たる場所。風が当たらない場所は、異物が落ちないので、体をぐるぐる回したりしてまんべんなく風を当てるようにする工夫が必要です。
2)エアシャワーの異物回収能力。回収能力が不十分な場合、せっかく落とされた異物がエアシャワー内に残され、再付着の恐れがあります。従って、異物回収能力が高いエアシャワーを選択しましょう。また、定期的にエアシャワーの中を清掃するのも大事です。
3)静電気による再付着。風とウエアの摩擦で静電気が発生し、異物がウエアに再付着することがあります。この問題を解決するには、エアシャワーに除電装置を設置すれば良いでしょう。
4)エアシャワーでも不得意な異物がある。平べったい異物が比較的にエアシャワーで落としにくいものです。その弱点を埋めるためには、粘着ローラーを使えば良いでしょう。
紹介アイテム
EVEエアシャワー
EVEエアーシャワーは搭載されている異物センターによって、付着異物量の多い人は異物がある一定量になるまで洗浄が継続されます。つまり、汚い人は入室を許されないのです。記録にも残るので、今後の調査にも有効です。
底面吸い込み機能
重力に頼って、ウエアから落とされた異物を回収します。横から回収する従来のエアシャワーよりも回収率が期待できます。
エアシャワー用粘着シート
「IVYキャッチャー」

エアシャワーで飛ばされた異物をキャッチし、再付着の予防に繋がります。また、持ち込まれた異物の調査にも使えます。
除電装置「CS−JJ」
除電することで、異物の再付着が軽減されることを期待できます。
粘着ローラー
生地を傷めない弱めの粘着ローラーをお勧めします。
他に、ウエア管理も非常に大切です。キレイなウエアと汚いウエアが接触しないように、ちゃんと分けて保管する必要があります。保管している間に異物が付着しないように予防することと、ウエアのクリーニング及び交換時期の管理も大事です。各現場のウエアの汚れ具合と劣化具合を調査し、適切なクリーニング頻度・交換頻度を決めましょう。

これらの課題を一つずつクリアしていけば、ウエアに関する異物対策の効果が相乗効果でより大きくなるでしょう。
(2)クリーンブーツ
クリーンブーツは最も床に接近する部分なので、床の汚れが付着しやすいと予想されます。靴底についてですが、床接触部の異物除去と、凹部の洗浄の双方が必要となります。床接触部は、クリーンマットで除去できますが、凹部は吸引タイプまたはブラシタイプの靴底洗浄機器が良いでしょう。

参考
新事例8「クリーンマットの効果について」


紹介アイテム
クリーンマット
靴底の床接触部の異物を除去するのに有効です。但し、長く使い続けてしまうと、効果が薄れるので、定期的に交換しましょう。
靴洗浄機能付きエアシャワー
エアさシャワーを浴びている間に、靴底の凹部まで簡易に異物を落とせます。薬液を使用した湿式とブラシのみの乾式の2種があります。
(3)手袋
手袋は、手の発塵を予防する反面、交差汚染の媒体になりやすい一つのアイテムです。従って、最適な交換時期を決めるために、調査することが必要です。調査するには、RACCARでスタンプテストを行えば良いでしょう。

また、手袋同士の付着抑制剤であるタルクの脱落調査も必要だと思われます。

参考
新事例12「手袋や指サックの交差汚染対策」

紹介アイテム
粗大粒子カウンター「RACCAR」
落下してきた粗大粒子(30μm以上)を大きさで分級し、量的なデータが得られます。操作が簡単で結果がすぐに出るので、測定箇所が多くても負担になりません。データがCSVファイルに保存されるので、後での分析も簡単です。スタンプテストにも使えます。
最後に
このようにハード面の調査・改善から始めて、問題を一つずつ着目し、解決していけば、ソフト面にも広がっていくので、最終的には、全体的に有効な対策に成り立つのです。めげずに一歩ずつ頑張っていきましょう。

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